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SCADA・DCS・PLCの違いは?
このページでは、SCADA/DCS/PLCについてそれぞれ説明をしていくと共に、その違いについて解説していきます。何を使用するかを選択する際には、これらの情報を参考にしてみてください。
SCADA/DCS/PLCについて
SCADAとは?
SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)は、大きな施設やインフラなどを構成している装置・設備から得られる情報を、ネットワークを利用して一箇所に集めて監視すると共に、必要に応じて制御するシステムです。これによって、施設内の機器を一箇所で管理・コントロールできるというわけです。
一例を挙げると、製造系の施設であれば、機械の作動状況や使用する部材のストック、進捗などの情報を一見管理し、その情報を元に、必要に応じて操作や補充といった対応を行っていけます。導入することで、作業・効率は大幅にアップすることが期待できます。
SCADAソフトの具体的紹介はこちらDCSとは?
DSCは分散制御システム(distributed control system)の略称で、システムを構成する各機器ごとに制御装置を設けるシステムです。それぞれの制御装置はネットワークで接続され、お互いに通信を行って監視します。はじめはアナログ信号のPID制御(ループ制御)用として用いられてきましたが、今では強力なシーケンス制御機能も組み込まれています。1980年代から普及が進み、化学系プラントや製薬会社、貨物船などで導入をされてきており、現在では主にポンプなどで使用されています。
PLCとは?
PLC(Programmable Logic Controller)は、機械を自動的に制御する装置の名称です。状況に応じて機械の動作を変更するのではなく、機械が行う動作に対して事前に順序を付けて記憶させることで、効率的に機械を動かせる装置となります。小型の設計が可能なため、スペースを有効活用でき、さらに動作の変更が容易なことから、これまでに多くのシーンで使われてきました。たとえば、工場や発電所、変電所といった大規模な施設だけでなく、エアコンや全自動洗濯機などの家庭用電化製品をはじめ、エレベーターや信号機、自動販売機、自動ドアなど、日常的に接する機会の多いものにも多く用いられています。
現在の主流はDCSやPLC
上記3つを比べると、SCADAの利便性が高いように思われますが、現状では国内において、そこまで広く使用されているわけではありません。SCADAのように一元管理せずとも、これまでに導入されてきたDCSやPLCで対応が可能な上、実際に人が動いて数字を把握する、というスキームで動いている工場も多々あるからです。そうしたところにSCADAを導入しようにも、そもそもの設計が非常に複雑になる上、業務フローの変更、社員教育など、導入にかかる労力やコストもかかるため、導入自体はそれほど進んでいたわけではありませんでした。
今後はSCADAがメインに?
近年ではネットワーク関連技術の確立によってアプリケーションのオープンソース化やパッケージ化が進んだ結果、汎用性があって一元管理に特化したSCADAが比較的安価で実装できるようになりました。特に、産業情報の一元管理による業務効率化を考えた場合、現場で人がメモして情報を管理するアナログなやり方や、これまでのDCS・PLCによる管理と比べた場合、汎用性が高く応用範囲も広いSCADAを採用する事例が増えています。
そしてIoT技術の進歩により、センサーや制御装置の小型化などが進んだこと、情報の種類や情報量が大幅に増えたことで、より細かな監視制御が必要なところも増えています。SCADAを使用した監視・制御の自動化、ネットワーク技術の向上によるリアルタイム処理にも期待が集まっており、今後はSCADA自体の性能向上、そして普及が進むことでしょう。
SCADAの仕組み
SCADAは、利用するシーンに応じてツールや技術を柔軟に変更できます。SCADAは大きく分けて「センサーなどの情報入力ツール」「情報の監視・制御ツール(PLCはここに含む)」「情報の表示・管理ツール」「通信基盤」の4つで構成されています。それぞれにおいて利用する機器はある程度自由に決められるので、適材適所なシステムを組むことが可能になっている、というわけです。特に最近ではテクノロジーの進歩に伴いセンサー類も発達、それらをインターネットでつなぐことで、SCADAの一括監視に組み込んで業務改善、効率化に役立てる、ということが増えてきています。
センサーなどの情報入力ツールについて
構成要素として挙げられるのはセンサーなどの末端のデバイスです。これらは、大型インフラ施設などの各所のデータを取ってくるためのものです。少し前であれば、工場の作業者が手入力で各作業場の作業状況や部品の作成数といった数字をタブレットやPCで入力していました。
IoTが出てきてからは作業者がその場にいなくとも、センサーが自動で読み取った情報を制御側に送るといったことが可能になり、手入力を行う機会が少なくなりました。SCADAでは、各所の状況を一括で把握するために、正確な情報のインプットが必要です。担当者が正しい数値や状況を伝えることが大事ですが、手入力はより少なくなり、より一層自動化が進むものと考えられています。
情報の監視・制御ツール(PLCを含む)について
センサーなどの情報入力ツールから得られたデータは、監視・制御ツールへ送られます。監視・制御ツールの代表的なものは、「PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)」と「RTU(遠隔監視制御装置)」の2つです。
SCADAを用いない従来のケースは、PLCのみで構成されるということもありましたが、全体を一括して監視・制御するわけではないので、個々のPLCの情報のやり取りなどを考慮せねばならないという側面があります。
RTUの場合には、自分で判断するというよりもデータを上位のシステムへと流し、制御を行うという特徴があります。どちらを用いるにせよ、特徴を把握した上での選択が必要です。また、このレベルの監視・制御ツールでは、センサーなどから上がったアナログデータをデジタルへ変換するという機能も持つ場合があります。
情報の表示・管理ツールについて
上記2つの構成要素によって各所からのデータを適切に集めることができました。次は、それらの情報を表示させ、管理することが必要になります。管理自体は人間が行うので、これらのデータをわかりやすくアニメーションやグラフィックを使って表示させます。この表示・管理ツールでは入力された情報を見るだけでなく、修正や下位システムへの信号の変更・書き込みが可能です。人間が直接扱うのはこの表示・管理ツールのみと考えても良いでしょう。適正値を超えた入力がされた場合は、アラームがなるといった仕組みやグラフィック上に赤で表示させることができ、一目で現場の異常がわかります。また、データの保存や書き出しも行うことができるので、過去の状況確認や報告にも用いることも可能です。
通信基盤について
上記でも触れたようにSCADAの構成要素を動かすためには、通信ネットワークが必要です。ネットワーク構成は複雑ではなく、センサーなどの情報入力ツールから監視・制御ツール、そして監視・制御ツールから表示・管理ツールへとつながっています。Ethernetやシリアル機器を用いて構成されることが多いです。SCADAのパッケージソフトを用いる場合は、規格に合った通信基盤を使用しましょう。また、セキュリティの観点から必要なネットワーク規格を選ぶことが必要となります。
PLCは産業用ロボットにも必須
PLCは産業用ロボットにも使用ができます。近年は製造現場において、産業用ロボットが目覚ましい活躍を見せるようになりました。産業用ロボットは人員を置き換える、という点で活用が期待できるだけでなく、コンベアなどで生産工程の自動化システムを構築することで、生産性の最大化も図れます。人的要因による効率の変化などが生じないからです。ただ、産業用ロボットをより活かすためには、スペースの確保・保守・メンテナンスの迅速さなどが必要になってきます。
PLCは、省スペースで安全に動作順序のコントロールができ、周辺機器との連携などを行えるため、ロボットシステムにも必須となっています。
SCADAとDCSの違いはなくなってきている
SCADAとDCSは、大きく分けると「一元管理をするか、分散管理をするか」という違いがあります。SCADAであれば一箇所で全てを統括できますが、その分システム自体の規模は大きくなっていきます。DCSであれば、ある程度個別に管理できますが、それぞれが集めた情報を別途で統括する必要も出てくるでしょう。ただ、近年ではネットワーク技術の向上などによって、DCS同士の連携がよりスムーズ、かつ的確に行えるようになってきており、SCADAとDCSの違いは薄れてきているということも見逃せません。今後こうしたシステムを導入する際には、何が目的か、そのためにどんなシステムが必要なのか、という点をしっかりと把握し、判断していくようにする必要があると言えそうです。
最後に
システムの導入については、さまざまな要因が関わってきます。現状のシステムがどうか、問題点は何か、その改善のために何が必要か、そのためのコストはどうか、導入後の試算はどうか、さらには導入によって採算がとれるのか、など…。システム導入は経営の基盤に関わることですから、どれだけ慎重になっても損はありません。ただ、明らかにメリットがデメリットを上回るということであれば、導入に踏み切る決断も必要です。
SCADA、DCS、PLSと、それぞれにメリット、デメリットがあります。それらをしっかりと把握した上で、最適な選択をするようにしてください。